糖尿病と診察されたら眼科受診も必要?
- 合併症、黄斑浮腫の早期治療を勧める理由とは

治療法の改善により順位を下げてきているものの、現在でも失明原因の第3位となっている糖尿病網膜症※1。その視力低下の原因のひとつに、糖尿病黄斑浮腫(DME)があります。多くの人が悩むこの病気について、現代における治療法や、日ごろの生活で気を付けるべきことなどを専門の先生にお話を聞いてきました。
※1 参考:Morizane. Y. et al. : Jpn J Ophthalmol 63 (1) : 26. 2019

村田敏規先生 画像

信州大学医学部付属病院 眼科 教授
村田敏規先生
専門:糖尿病網膜症

1986年に九州大学医学部卒業。米国ドヘニー・アイ研究所、ハーバード大学医学部眼科への留学などを経て、2004年より信州大学医学部医学科眼科学教授に。大学院の頃から黄斑浮腫とVEGFをテーマに研究。ハーバード大では初めての抗VGEF薬を世に送り出した教授のラボで、眼科治療の研究に取り組んだ。
現在も眼の健康に悩まれる方々の問題を解決し、信州から日本を元気にすべく尽力している。

糖尿病黄斑浮腫ってどんな病気?

――糖尿病黄斑浮腫とはどのような病気なのでしょうか。

村田敏規先生(以下村田先生):糖尿病黄斑浮腫は糖尿病網膜症に起因します。糖尿病網膜症は、かつては失明原因のトップでしたが、よい治療ができるようになったことや、血糖コントロール法などが進歩したことで、現在は3位となっています。つまり、ちゃんと治療すれば以前に比べ失明しにくい病気になっていると言えます。初期症状としては、視界がぼやけるような感じです。障子のさんなどまっすぐなものがゆがむ、ということもよく言われますが、多くの方はただぼやけていると感じられているようです。

――糖尿病黄斑浮腫の原因としてはどのようなことが挙げられますか?

村田先生:まず糖尿病になると、糖によって血管がもろくなってしまいます。塩水で錆びてボロボロになってしまう水道管のようなイメージですね。錆びた水道管から水が漏れたり詰まったりしてしまうように、もろくなった血管からも血液が漏れたり詰まったりします。そうなると、新生血管という新しい血管が作られます。これが目にできてしまうと最終的には網膜剥離や血管新生緑内障などによって失明することもあるんです。黄斑浮腫は、例えると水膨れと同じで、“もろくなった網膜の黄斑部の血管から血液が漏れて膨らんでいる”という初期の状態です。黄斑浮腫は、ほぼVEGF(血管内皮細胞増殖因子:血管から水を漏らし、かつ新生血管をつくるためのタンパク質)によって引き起こされていますので、これを対策することが治療になります。

糖尿病と診断されたら、すぐに眼科へ

――糖尿病黄斑浮腫の患者さんからは、どのような相談が多いですか。

村田先生:多くの患者様からいただく最初の相談は「最近よく見えないので、メガネやコンタクトを作りにきました」という内容ですね。メガネなどで矯正して回復するような視力低下と、糖尿病黄斑浮腫の大きな違いは、ゆがみがあるかどうかです。網膜とは、カメラのフィルムのようなものなので、フィルムが膨らんでいればそこにゆがみが生まれます。残念ながら網膜の血管は取り換えが効きませんし、メガネやコンタクトでは視力は回復しません。手術や投薬といった治療が必要です。視力が著しく低下するとゆがみに気づかず、かすんでいるだけのようにも感じます。

村田敏規先生 画像

――糖尿病の患者さんは内科を受診されているかと思いますが、やはり眼科も受診しなければなりませんか。

村田先生:ある調査では、無症状でも血液検査で糖尿病と診断された方の3割ほどが、既に糖尿病網膜症を発症していた※2という報告もあります。ですから、糖尿病と診断されましたら一緒に眼科も受診していただくことが重要です。ただ、お仕事などでお忙しいためか、内科に加えて眼科も受診するということができていない方が多くいらっしゃるのが現状です。受診頻度については眼科医の中でも激論があったのですが、糖尿病の方は診断されたらすぐに受診し、糖尿病網膜症と診断されたら少なくとも年に2回程度は眼科に来て頂きたいですね。それが視力を守ることになると思います。視力は、網膜の中心窩という1mmほどの場所で決まります。その1mmの範囲に何かが起きなければ視力は落ちません。非常に大事な部位なので最後まで体も守ろうとしますが、中心窩に何か変化が起こってしまったらなかなか視力を取り戻すのが難しくなります。
※2 参考:Diabetes Care . 2017 Mar;40(3):412-418

PP-EYL-JP-0826-07-10