ケース1 早期退職で目の検診の機会を失う
美しい景色をいつまでも(気付き~検査)
愛知県の山本さん(仮名、69歳)は、がんで早期退職後、眼科の検診を受ける機会を失いました。
ある日、見えにくさに気付いた時には、「加齢黄斑変性」が進んでいました。
幸いにも、治療で進行が抑えられ、目も全身も健康であることの大切さが身に沁みています。
山本さん(愛知県) 男性 69歳
症状:視力低下・モノが歪んで見える
病名:加齢黄斑変性
運転免許更新時に視野検査を課される
事務機メーカーの営業職として長らく勤めていました。
若い頃から近視や乱視があって、日頃は眼鏡を使っていました。
60歳を過ぎた頃から、以前より、何となく見えにくくなったな、視力が悪くなったようだなと感じていました。
会社では年1回の定期健康診断を受け、視力を測るとやや衰えていると分かりました。
ただし、特別な異常を指摘されることはなく、仕事に差し支えるほどではありませんでした。
どちらかといえば健康なほうだったのですが、62歳の時、食べ物が喉につかえるような違和感を覚えて、病院を訪ねたところ、精密検査で食道がんであると診断されました。
2カ月ほど入院しましたが、幸いにも治療が奏功してがんを退治することができました。
がん治療の負担で体力の衰えも感じていたし、この大病をきっかけとして、定年を少し残して退職することにしました。
好きな歴史の本を読んだり、体力が回復してからは、小旅行を楽しんでいました。
64歳の誕生日を迎える頃、運転免許証の更新に行くと、両目での視力が0.7に満たないと分かり、初めて「視野検査」を受けました。
何とかパスしたので運転はできますが、少々不安を感じていました。
左目だけで見たら物が歪んで見えた
65歳になって、がんを克服して3年が経ち、やれやれと思っていたのですが、どうも視力の低下は続いているようでした。
世間でいえば「高齢者」といわれる年代に入ることもあって、加齢による白内障だろうと考え、自宅近くの眼科医院を受診してみました。
会社を退職してからは、眼科の検診から遠ざかっており、診察も久しぶりでした。
問診や視力検査など、じっくりと1時間かけて検査をしてもらいました。
左目だけで見てみると、随分と物が歪んで見えたので、びっくりしました。
両目で見ていると、異常があっても分からないものですね。
普段から片目だけでチェックしてみる習慣があったら、もっと早く異変に気付けただろうにと、少し後悔しました。
ひと通りの検査を終えた後、医師から、「左目は加齢黄斑変性の疑いがあります。できるだけ早く、大学病院で精密検査と治療を受けてください」と告げられました。
全く聞き慣れない病名だったのですが、がんを告知された時よりは気が楽でした。
きちんと治療すれば、元通りに治るだろうと勝手に思っていたので、あまり不安は感じませんでした。
眼科医院の先生に、近くの大学病院に紹介状を書いてもらいました。