患者さんの負担が少ない新しい治療スタイル「Treat & Extend」とは
加齢黄斑変性の新しい治療スタイル「Treat & Extend」(トリート・アンド・エクステンド)。この治療スタイルがどのようなものなのか、加齢黄斑変性の症状や日々の予防法なども含めて専門の先生にお話を聞いてきました。
東京女子医科大学 眼科 教授・講座主任
飯田知弘先生
専門:黄斑疾患、網膜硝子体疾患
1985年に新潟大学医学部卒業。2003年より福島県立医科大学教授、2012年より現職。学生時代に眼科の診療を学ぶ中で、「目は小さな宇宙を形成している」と、その美しさに興味をもち眼科医に。眼科医になった当時から、白人の失明原因の1位が加齢黄斑変性であったことや、今後の日本で患者さんが増えることを考え、30年以上研究を続けている。
また、視力はQOLにも直結することから、患者さんの生活の質の向上を目指し、日々の診療や研究に務めている。
加齢黄斑変性ってどんな病気?原因は?
――加齢黄斑変性という病気はどんな症状か教えてください
飯田知弘先生(以下飯田先生):まず、加齢黄斑変性は滲出型と萎縮型の2種類ありますが、日本人は9割が滲出型です。症状として最初に患者さんが感じられるのは「ゆがみ」です。視野の中心がゆがみ、かすんできて、最後には中央部分が見えなくなってきます。ですが、普段は両目で見ているので症状に気付きにくく、年齢のせいかな? と放置されることも多いです。アムスラーチャートを時々チェックしていただいたり、窓枠などまっすぐなものを片目ずつ見てみて、ゆがんたり違和感がないか時々で良いのでチェックしていただき、早期発見することが大切です。加齢の影響がある疾患ですので、50歳くらいから意識していただきたいですね。例えば、老眼鏡などメガネを作るときなどに、一緒に眼科で眼底検査などを受けるとよいと思います。
――加齢黄斑変性はどのようにして起きているのでしょうか
飯田先生:黄斑というのは目の中で一番、光が集まるところです。そのため、一番老化現象が起こりやすい場所になっています。そこに老廃物が溜まってしまって変形し、視力に影響を及ぼしてしまうのが加齢黄斑変性です。老廃物が細胞を萎縮させてしまうと萎縮型、老廃物による刺激で炎症などが起こり、新生血管と呼ばれる弱い血管が生じると滲出型になります。
新生血管から出血やむくみが生じてきます。
眼科での検査や治療の流れは?
――初診の際、どのような検査をするのでしょうか
飯田先生:まずは問診して、その上で、いろいろな検査を行います。視力測定や眼圧測定、それから散瞳(さんどう)といって瞳を開いて眼底検査をできるようにします。その後、細隙灯顕微鏡での検査や眼底検査に進みます。その他、眼底写真やOCTといった画像での診断などを一連の検査として行います。散瞳検査については、お薬をつけてから瞳が開くまでに20~30分はかかり、そのうえでさまざまな診察を行いますので少しお時間を頂くことになりますね。また散瞳検査をすると数時間は眩しくなるなど、少し見えにくくなりますので、その点もご注意いただきたいところです。
――初診で加齢黄斑変性であることがわかった場合、再診からはどのような治療になるのでしょうか
飯田先生:萎縮型の場合は、残念ながら有効な治療法はありません。滲出型の場合は10年ほど前から新しい薬剤が登場しています。それまでは、現状より悪化させないといった治療しかできませんでしたが、最近の薬剤では投与前よりも視力が改善する結果が得られています。長年、加齢黄斑変性の治療に携わってきましたが、最初に登場してきたときにはこんな治療法があるのかと驚きました。