網膜症と黄斑浮腫

糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫とは

糖尿病により網膜の血管の障害が進むと、その影響は大きく二つの変化となって現れます。

変化の一つは、網膜の血管の血液の流れが悪くなって、網膜の一部に血液が流れていない箇所ができてしまう現象です。糖尿病網膜症の原因となります。
変化の二つ目は、血管の壁が脆くなって血液の成分が漏れ出す現象です。糖尿病黄斑浮腫の原因となります。

正常な状態
糖尿病網膜症

網膜の血液が十分に流れない

新生血管が網膜と硝子体を
癒着させ硝子体の収縮を
機に、網膜を引き千切る

新生血管が破れて眼球の中に出血

正常な状態
糖尿病黄斑浮腫

血管の壁から血液の成分が漏れ出す
(血管透過性亢進)

漏れ出した血液の成分が
視力にとって最も大切な
「黄斑」に溜まる

・糖尿病網膜症

糖尿病網膜症は、糖尿病で血糖値が高い状態が続くことにより起こる合併症で、三大合併症と呼ばれる代表的な合併症のひとつです。
長い期間、血糖値の高い状態が続くと、網膜にはりめぐらされている細かい血管(毛細血管)が傷ついたり、つまったりして起きる病気です。
病気の初期では、見え方に変化はありませんが、放っておいて病気が進行すると、ゆがみや見えないところが現れます。

・糖尿病黄斑浮腫

「黄斑」とは、「網膜の中でも最も視力の鋭敏な部分」です。
糖尿病黄斑浮腫とは、網膜の血管にコブができたり、血管から血液中の成分がもれだし、それが網膜内にたまっている状態です。
網膜内に血液中の成分がたまっているため、ものの詳細を見分けたり、文章を読んだりするのにとても大切な場所、「黄斑」がむくんでしまい、ものが見えづらくなります。

日本における糖尿病網膜症

糖尿病網膜症の有病率は15.0~23.0%との報告があります。
患者数は大きく増加していませんが、糖尿病患者数が増加しており、今後、糖尿病網膜症も増加する可能性が指摘されています。
また、糖尿病黄斑浮腫は糖尿病網膜症の20%に合併するという報告※1に基づき算出すると、日本人の糖尿病黄斑浮腫の有病率は3.0~4.6%と推定されます。

〔※1〕中野 早紀子,第114回日本眼科学会総会 2010:135

■糖尿病網膜症の有病率

■糖尿病網膜症の有病率

久山町研究:40歳以上の住民を対象に実施
舟形町研究:35歳以上の住民を対象に実施

安田美穂:あたらしい眼科 28(1):25-29,2011
川崎良:日本の眼科 79(12):1697-1701,2008

糖尿病患者さんの約5人に1人は、糖尿病網膜症の恐れがあります。

糖尿病患者さんの約5人に1人は、糖尿病網膜症の恐れがあります。

糖尿病網膜症になりやすい人

糖尿病の患者さんのうち、どのような患者さんが網膜症を発症しやすいかには
三つの点<血糖値、糖尿病歴、血圧>が関係しています。

■血糖値が高い(以前は高かった)

血糖コントロールが悪い人は網膜症になりやすく、かつ進行しやすいと言われています。

■糖尿病歴が長い

糖尿病歴が5~10年で網膜症の発症は急激に増加すると報告されています。

■血圧が高い

高血糖と高血圧は互いに悪影響を及ぼしあいます。

現在は血糖コントロールが十分でHbA1c値が高くなくても、 以前高かった人は十分注意しましょう!

現在は血糖コントロールが十分でHbA1c値が高くなくても、
以前高かった人は十分注意しましょう!

糖尿病患者の方へ
 

糖尿病患者さんの約5人に1人は
糖尿病網膜症の恐れがあります。

糖尿病患者の方へ

糖尿病で起こる
主な目の合併症と発症率

糖尿病で起こる主な目の合併症と発症率について紹介しています。

糖尿病で起こる 主な目の合併症と発症率

糖尿病網膜症は
気づかないうちに進行します

進行してからでは
視力の回復が難しい病気です。

糖尿病網膜症は 気づかないうちに進行します

眼の合併症を予防するために
 

糖尿病の合併症を防ぐには、定期的な眼科受診、血糖と血圧のコントロールが大切です。

眼の合併症を予防するために

監修 医療法人社団白萌会 白矢眼科 副院長・黄斑疾患研究所所長 北野 滋彦 先生